リモートワークを前提とした世の中が遅くとも2025~2030年に来なければ、経済的成長は難しい

(2021/03/11更新)

「リモートワークを前提とした世の中が遅くとも2025~2030年に来なければ、経済的成長は難しい」と語る気鋭の工学者玉城絵美氏。「固有感覚」を活用したテクノロジー×5Gで、リモート観光、リモート農業など、さまざまな体験や就業ができる時代になりました。玉城氏のご自宅と、創業手帳代表の大久保をリモートでつなぎ、玉城氏がコンピュータを使って実現したい未来について話を聞きました。

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玉城 絵美(たまき えみ)早稲田大学准教授。博士。H2L創業者。

1984年沖縄県生まれ。 2006年、琉球大学工学部情報工学科卒、筑波大学大学院システム情報工学研究科、東京大学大学院学際情報学府でロボットやヒューマンインターフェースの研究を行う。2011年「ハンドジェスチャ入出力技術とその応用に関する研究」で東京大学・博士(学際情報学)。アメリカのディズニー・リサーチ社、東京大学大学院総合文化研究科などを経て、早稲田大学准教授。
2012年、東京大学大学院で同じ暦本純一研究室に所属し、ヒューマンコンピューターインタラクションを研究していた岩崎健一郎とともに、「H2L」を起業。身体そのものを「情報提示デヴァイス」にする「PossessedHand(ポゼスト・ハンド)」は2011年『TIME』誌の「The 50 Best Inventions」に選出。2016年、外務省WINDS(女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ)大使に任命。
著作『ビジネスに効く! 教養として身につけたいテクノロジー』([総合法令出版]、2019年)

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

リモートワーク前提の世の中にならなければ、経済成長は難しい

ー本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。弊社では、「リモートワークを前提とした世の中」が来るという想定のもと、起業を目指す方々にリモートワークに役立つ情報を提供する『リモートワーク手帳』を運営しています。玉城さんは「リモートワークを前提とした世の中」について、どうお考えですか?

玉城:私はリモートワークを前提とした世の中が来ないと、経済的に成長していかないのかなと思いますので、ぜひ来てほしいと思っています。その時期については、遅くとも2025~2030年の間に来てもらわないと、なかなか経済的成長は難しいと思います。

20~30年前に比べて、人の移動の流動性(人材流動性)は非常に高くなりました。自動車や電車、飛行機などの利便性が向上し、国同士の流動性も高まっています。流動性が高くなれば、徐々に技術も発展して移動コストは安くなります。そうなると、感染症が広まるのは必至です。

今は新型コロナウイルス一色ですが、インフルエンザのもっと強力な型かもしれませんし、出血熱かもしれませんが、今後は他の感染症が流行る可能性も高くなります。テロのリスクも同様です。

また、今まで土地で担保されていた治安の安定も変わっていきます。「ここは女性でも安心して住める地域」とか「ここは治安が悪い地域」などと言われますが、人の移動の流動性が高くなってくると、それもなくなってくるので、流動性をひたすら高くしていくのは、人類全体としてはリスキーです。

その中で「移動することなく、安全を担保できる」という選択肢をきちんと技術的にフォローアップしていかないと、「違うウイルスが発生したから、また緊急事態宣言発令」といったことになってしまいます。

今後は「時間とお金のコストがゼロで、危険性もゼロの移動手段」であるリモートを、選択肢として持つ必要があると思います。

PossessedHand(ポゼスト・ハンド)のテクノロジー

ー玉城さんが研究されている「PossessedHand」について、ご説明いただけますか。

玉城:PossessedHandは「固有感覚」を共有する装置で、新しいインタフェースの1つです。

今大久保さんと私はリモートで話していますが、視覚情報はカメラからコンピュータに入力されて、ディスプレイから出力されています。PossessedHandは、「固有感覚」という感覚をコンピュータから人間に出力してくれるデバイスです。

「固有感覚」は皮膚の深部(関節、筋肉、筋)で感じる感覚で、「深部感覚」とも言います。物を持った時に重い・軽いと感じる重量感覚や、物を押して指が曲がるという抵抗感覚、腕を下ろしている時に感じる位置感覚などは、すべて固有感覚です。

それに対して、ツルツル・ザラザラ、冷たい・熱いなどは「表層感覚」です。今まで「固有感覚」を入力・出力する装置がなかったため、PossessedHandを作りました。

ーこれはよく聞かれて、うんざりされているかもしれませんが、教えてください。PossessedHandは違うと思いますが、リモートに固有感覚とコミュニケーションがあると、良くも悪くも完全にバーチャル世界に没入してしまうということでしょうか?それは100年後でしょうか?10年後でしょうか?

玉城:5年後ぐらいだと思います。

5Gで実現できるリモート体験

玉城:これは、那覇市にいるユーザーと、名護市にある上半身ロボットを乗せたカヤックを5Gで繋いだ実験の様子です。ユーザーがバーチャルのパドルを動かすと、名護市にあるロボットのパドルが遠隔で操作され、カヤックが動きます。ユーザーのモニターにはカヤックの前方が映り、本当にカヤックを動かしているように見えます。

5Gによって、データの遅延がかなり減りました。そのおかげで視聴覚情報だけでなく「固有感覚」の遅延もほぼなくなり、多くの情報を送れるようになりました。昔から言われてきた「リモート観光」も、夢ではなくなってきたということです。

ー時間の問題で、そういう時代になるわけですね。

玉城:そうですね。あとは、「いつ導入するか」と「それが本当に必要とされる社会情勢になるかどうか」で変わってくると思います。その他に弊社では、遠隔農業もやらせていただいています。

ーリモートで種を撒いたりする、ということですか?

玉城:おっしゃるとおりです。スマートフォンで種を撒いたり、収穫したりすることをUFOキャッチャーのようにできるのですが、「固有感覚」をきちんとフィードバックすることで、ロボット制御ができるようになります。例えば、桃を収穫する時にリモートで操作しているアームで、桃を強く握り過ぎて潰してしまうようなことはありません。

先ほど大久保さんがおっしゃった「没入感」をどのくらい出すかは、サービスに応じて設計していこうかなと考えています。

ー5Gを経由したリモート観光や、リモートで農作業ができる時代が来たわけですね。企業も、リモートになるとダイバーシティを取り入れやすくなりそうですね。

玉城:そうですね。例えば、ものすごく若くて、大学を飛び級で卒業した人と一緒に仕事ができたり、50~60代の人が副業として入ってくれるといったことも、すごく重要だと思います。

リモートワークは「積極的にやりたい人」「あまりやりたくない人」「ハイブリッドでやりたい人」がいて、ハイブリッドで働きたい人が一番多いです。リモートワークで集中して企画を書くのもよし、ブレストをして企画案をたくさん出すのもよし。そういう意味で選択肢が増えるのは、皆さんにとってよいことですよね。

楽しく働けて、時間効率が良く、高いバリューが出せるのが理想ですから、会社の理念によって、どこにどのぐらいのウェイトを置くのかが決まり、そこに人材流動性が加われば最強ですよね。

PossessedHand(ポゼスト・ハンド)で体験価値を生み出したい

ーありがとうございます。PossessedHandは、玉城さんが体力的な面であまり外に出られなかったご経験から生まれたというお話でした。

「固有感覚」で気鋭の工学者玉城絵美がH2Lを起業するまで

「究極の感染症対策」であるとか「体験が広がる」など、いろいろ用途はあると思いますが、どういう方に一番使ってほしくて、それによって世の中がどう変わるか、最後に伺えればと思います。

玉城:一番使ってほしい人は「人生の2周目を経験してみたい」人です(笑)。何通りかの人生を楽しみたい、という人ですね。

なぜかというと、みんな後悔するんですよ。「病気でなかったら」とか「この仕事に就いていなかったら」とか。H2Lの代表取締役の岩崎は30代男性ですが、「美少女だったらなあ」とよく言います(笑)。

多くの方が「いろいろな人生を試してみたい」と思っていますが、自分の身体に縛られて人生経験ができないのが、私はいやなんですね。「もし自分の身体以外のものを使って、いろいろな人生を経験できるとしたら」ということを、コンピュータで実現していきたいと思っています。「一度切りの人生」と言いますが、皆さんには100の人生を送ってほしいと思います。

ー本日は素晴らしいお話をありがとうございました。

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(取材協力:H2L/玉城 絵美

(編集:創業手帳編集部)