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RPAで自動化すれば簡単に終わる仕事、いつまで今のままの方法でやりますか?
(2020/01/07更新)
Contents
”クラウド”すら通じない昭和な会社でRPA導入に孤軍奮闘する姿がTwitterで話題に。人事総務担当として手書き事務作業に追われる日々に、「このままでは自分も同僚にも未来はない」とネットで見つけたRPA導入を決意する。DX化に無理解な経営層にあきらめず効果を訴え続け、自動化ツール活用で社内改革に挑むメンバーを増やしていった。コロナ禍で予算カットの危機が訪れるが、コスト1/10のRPAツールへの乗換えも成功させ活動を継続させる。「中小企業を自動化ツールで変革し地方に明るい未来を」が人生目標。Twitterアカウント:@aachan5550
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
DX化、自動化を拒む昭和な会社の特徴とは?
コロナでリモートワークが推奨され、働き方の改善やDX化・自動化の必要性を感じている会社も多いのではないでしょうか。
PCなどを使用して行う一連の事務作業をまるごと自動化できる、と言われているのが、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)です。あたかもPCの前にロボットが座り、操作しているかのように業務を自動化してくれるツールです。
ただ、DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は導入したら全てやってくれる万能の魔法の杖ではなく、導入の仕方にもコツが必要です。そんなこともあって、なかなかDX・自動化が進まない会社も多いのが実情といえます。
DX化・自動化が進まない会社をRPA導入で中から変えることに挑戦し続けたのが、Twitterで人気の「あーちゃん」氏。昭和なメーカーでRPA導入に孤軍奮闘した、「RPA」OLに、創業手帳の大久保がDX・自動化の始め方をお聞きします。
RPAとはどんなもの?
大久保:いわゆる昭和な会社にRPAやDXを取り入れようと奮闘されているそうですね。改めて、RPAとはどんなものなのでしょうか?
あーちゃん:DXはビジネスモデルの変容も含むものですが、RPAはロボットに単純作業を代行させるツールで、DXのツールのひとつといえます。RPAはPCの中で動くものです。
大久保:RPAを会社に取り入れることによって、どんなメリットがあるのでしょうか。
あーちゃん:働く人にとっては、苦痛な作業から開放されるのが一番大きいと思います。例えば、システムからシステムへ人がデータを移すような作業は、単調だけれども、間違えるわけにはいきません。意外と課長クラスや、優秀な経営管理の人などが単純作業をしていますし、会社もそういう人員配置にしてしまっていますが、それで本当にいいのでしょうか?
働く人も会社も、誰も得をしていませんし、それが付加価値を生んでいないと理解している会社は少ないです。
昭和な会社の特徴とは?
大久保:古い会社の、古い働き方はどこが欠点だと思われますか。
あーちゃん:DX化・自動化が進まない昭和企業には、以下の特徴があると思っています。一言で言えば、昭和時代の美徳・価値観をそのまま引きずっている会社ではないでしょうか。
1.過去の成功体験に囚われている
・主要取引先についていけば、仕事は今後もある
・リーマンショックや東日本大震災もなんとか乗り越えたので、なんとかなる
2.我慢信仰
・我慢することは良いこと、美しいこと。道具も仕組みも壊れるまで我慢して使う。
・「テクノロジーで効率的に快適に」という意識がなく。人に対する投資意識も低い。
・人件費が高いという意識がない。
3.成果<忠誠心、意見≒反論の誤解
・なんでもイエスが最適解。リスクを負ってまで挑戦しなくなる
・意見を言うと批判非難していると捉えられ、発言者の立場が悪くなる。
・フラットな議論ができず、テクノロジー感覚のある社員が意見を言いにくい、言えない
また、パソコンやメールを使わない経営陣は目に見えない、訳の分からないデータ、ソフトよりも目に見える機械への投資を優先しがちです。背景には経営層の高年齢化や事業継承問題もあり、これらの要因から会社のDX化・自動化が進まないという状況に陥ると感じています。
昭和な体質の企業も、DXしたら変わることができる?
大久保:古い会社もDXしたら変わるのでしょうか?
あーちゃん:私は昭和企業で2年間RPAやデジタル化に取り組みましたが、会社を大きく変えることはできませんでした。しかしながら、身近な同僚数名は「自動化ツールを活用して付加価値の高い仕事をする」という価値観を獲得し、少しずつ社内にテクノロジー活用が浸透していく手応えがありました。採用説明会のオンライン化、テレワーク導入、社員情報のスマホ入力などは私以外の社員が進めていきました。
それでも、日常業務の中で、例えば「電子契約では信用できないので紙の契約書を出せ」というやり取りに遭遇します。
大久保:わざわざクラウドツールを印刷して紙で出すみたいなことって、まだあるんですよね。偉い人は役所でも会社でも、そういう感じがまだありますね。
例えば以前、内閣府の書類電子化の委員をしていた時に知ったんですが、役所によっては電子申請を紙でわざわざ印刷して作業していると。
東日本大震災の時は、紙書類のほうが脆弱で、戸籍とかが流されてしまって無くなってしまったといいます。サーバーは分散しているから大丈夫だったんですよね。
あーちゃん:そうですね。例えば、うちの会社でも昭和チックな会社の偉い人が、クラウドサービスのサーバーの場所はどこだとか、場所が分からなくて大丈夫なのかとか聞くわけです。
大久保:起業前にIT系の会社にいたんです。そこもサーバー運営していましたが、サーバーは場所が分かったら危ない。そしてサーバーが置いてある場所が打撃を受けたら困るので、バックアップのサーバーを地理的に離れた場所に分散させます。
だから場所が「ここです」とか分かったら駄目ですよね(笑)。でも、昔の感覚だと場所がわからないと危ない、となってしまう。実際は場所が分からないから安全だと。真逆でおもしろいですね。
あーちゃん:そうですね(笑)。そういう感覚も昭和な会社はズレていますよね。
昭和な会社がいくらDXに取り組もうとしても、上記3つの価値観を変えない限り、社内に定着することも、ITに意欲的な人材が社内で継続的に活躍することはないですし、意欲的な若い人が辞めてしまい、ますます組織の老化が始まるでしょう。
一方で、上記価値観をすぐ捨て、経営者自らがDXツールツールを触り、理解しようとする姿勢を見せれば、意欲的な社員たちが生き生きと活躍し、DXで社内を変えていくことができるのではないかと思います。
「RPA妖精さん」をPCに宿らせよう!
RPAでどんな業務が自動化できる?
大久保:具体的に、RPAではどんな業務の自動化が期待できるのでしょうか?
あーちゃん:RPAはツールによって若干の差はありますが、PC上のほとんどの作業を自動化することができるツールです。インターネット(Webブラウザ)、インストール型ソフトウェアも操作できますし、メールを送信することもできます。
イメージ的には自分のPCに妖精が宿るようなイメージです。いままで自分がやっていた作業を妖精さんがいつのまにか、ささっとやってくれる、というイメージですね。
例えば、受注データを販売管理システムから、何回もダウンロードしてエクセルに貼る作業や伝票を一斉に取引先にメールで送るなどの作業の自動化ですね。以前は手作業で取引先ごとに本文を作成し、伝票ファイルを添付してメール送信ボタンを押すなどしていましたが、今は同じ作業をRPAが自動でやってくれています。
RPA妖精さんのすごいところは「休まない、辞めない、文句を言わない」です。この素晴らしさを痛感したエピソードがあります。改善や指導もできるエース社員が単純作業をいっぱい抱えていたので、短時間パート社員を雇い、単純作業を移管しました。
しかしそのパート社員は1年ほどで退職することになりました。またすぐにエース社員は単純作業に追われ改善や指導ができなくなってしまったのです。そのため「辞めない」RPAを使って、エース社員の単純作業の自動化に取り組みました。
RPAにはプログラミングの知識が必要?
大久保:RPAは難しい知識がなくても取り入れられますか?
あーちゃん:PC作業を自動化する技術は昔からたくさんありましたが、RPAはプログラミング(コーデイング。Dim i As Longなど機械語を使用する)ができない人でもできるということが最大のメリットではないでしょうか。
私はRPAに出会った時、人事総務を担当しており、プログラミング経験はゼロ、自宅のWifiの設定もできない状態でした。RPAは プログラミングではなく、指示ブロックを組み合わせることで制作ができます。”Excelファイルを開く”や、”セルに値を入力する”などの指示ブロックがあらかじめ準備されているのです。
ノーコードではないですが、ローコードではありますね。ゼロから何かを作るのではなく、レゴを組み合わせて、家を作ったりするようなものといえばわかりやすいでしょうか。
RPAに単純作業をまかせ、「人間にしかできない仕事」に時間を割こう
大久保:RPAに仕事を奪われる、という声はなかったですか。
あーちゃん:確かに抵抗する人もいます。対処法としては、ミスが許されない、件数が多いなどのストレスフルな業務をRPA化し、ラクさを実感してもらうことです。RPAは休日だろうと、深夜だろうと、文句も言わず働いてくれます。月末月初に仕事が集中して、休みが取りづらい状況がRPAで改善されれば抵抗する理由がなくなってきます。辞めることも病気になることも不機嫌になることもない同僚というのは、社員にとっても、経営者にとっても非常に頼もしい存在となります。
またハイスペックな社員たちの仕事がRPAでラクになると、考えることが必要な業務に時間を割けるようになり、より広い視野で業務を進められる効果もでてきます。
人手が欲しくなったから、単純作業専門のRPA社員を迎え入れよう!なんて感覚になる日も近いのではないでしょうか。
大久保:確かに、そういった面でもRPAは有効なのですね!後編では、具体的なおすすめのRPAツール、会社への導入の方法などについてお聞きしたいと思います。
(次回に続きます)
(取材協力:あーちゃん@昭和企業でRPA)
(編集:創業手帳編集部)