リモートワークで効率的に働く方法とは?先駆者クリンクスのテレワーク事業本部長に聞いた!

日本でも働き方改革・新型コロナウイルス感染症の影響もあり、リモートワークの導入を実施している企業が増えました。

多くの企業が注目をしているリモートワークですが、コロナによる影響を受ける前、2016年からリモートワークの事業を開始していた企業が「CLINKS株式会社」です。

リモートワーク先駆者でもある「CLINKS(クリンクス)株式会社のテレワーク事業本部長 疋田様」にテレワークのノウハウや魅力、今後の課題について伺いました。

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リモートワーク手帳

(2021/03/19更新)

疋田大輔(ひきた だいすけ)CLINKS(クリンクス)株式会社 テレワーク事業部 部長
エンジニアでの経験10年を経て、2016年からテレワークの取り組みを開始。
2017年に在宅エンジニアの社員雇用及び在宅派遣サービス「テレスタ」のリリース。
社内でテレワーク制度を構築・推進を行い、社内外に向けた「テレワーク」の発信を行う。
2019年には総務省よりCLINKS(クリンクス)株式会社が「テレワーク先駆者百選」に認定を受ける。
2021年にはテレワーク協会よりテレワーク推進賞を受賞。
更に同年、東京都より「TOKYOテレワークアワード」にて推進賞を受賞。

リモートワーク事業推進のきっかけと選任の仕方

ーまず初めに、クリンクスはテレワーク事業の先駆者にあたる企業だと考えるのですが、いつごろからテレワーク事業を始めたのかお伺いしてもよろしいでしょうか。

疋田:私が関わったのは2017年からです。

会社としては2016年からテレワークをトライアルとして実施をしていたのですが、本格的に事業化しようとしたタイミングで私が選任を受けました。

ー今までテレワークのご経験があって選任を受けたのですか?

疋田:いえ、私自身もテレワークを知らなかったです。

声がかかったのが2016年ですが、当時の私は「テレワーク」という言葉自体知らなかったくらいで、まずどのような働き方なのかを徹底的に調べました。

とりあえず、社内で「テレワーク」について一番詳しい人物になろうと考え、当時からテレワークに関するセミナーが多かったため、参加をしていました。

特に、2016年当時から官公庁がテレワークの導入を推し進めていた影響もあり、東京都が推進に力を入れていたという点のタイミングも良かったと思います。

ー東京都も既に推進を促していたんですか。

疋田:はい。東京都が「東京オリンピック」が開かれるまでに「テレワークを導入している企業を増やそう」とした目的で推進していたようです。

この東京オリンピックまでに導入企業を増やすという点にも理由があり、2012年のロンドンオリンピックが開催された時に、ロンドンが「市内の8割ぐらいをテレワークに切り替えた」結果、「交通網のマヒを防ぐことができた」という実績があったんですよね。

東京都もロンドンの結果を参考にして、東京都オリンピック時に交通網の大混乱を避けようと「リモートワーク推進」に力を入れていたので、私自身もセミナーに色々参加して学びました。

ー今はテレワークも以前と比べると浸透してきたと思うのですが、もしテレワーク事業を今から始めるとなった場合に、どのような人物を担当者に選任しますか?

疋田:そうですね、「折れない心を持っている人物」を選びます。

今だったら理解が得られやすい部分はあると思いますが、社内に浸透させる・理解を得るという点は私自身も苦労をしました。

一般的に導入しやすいと思う点では「トップダウン」の形が導入しやすいのではないでしょうか。

できるのであれば、まずは(STEP.1)社長の理解を得る(STEP.2)社長から管理職の人物に対して伝えてもらう(STEP.3)管理者から社員に伝えるという流れが早いと経験しました。

ー2016年頃から働き方改革に力を入れるようにしたきっかけはなんですか?

疋田:きっかけは2つありまして、「離職率の低下」と「在宅エンジニアの社員雇用」がきっかけになります。

中でも「在宅エンジニアの社員雇用」は2016年の段階から構想がありました。

在宅エンジニアを雇用しようと構想が練られていた理由は、2016年当時からIT業界の慢性的な人材不足がありまして、どのように人材を獲得しようかと考えたところから、「リモートワーク」という働き方に繋がりました。

実際に「在宅エンジニアを社員雇用をしている」という企業は周りにもまだ少なく、個人事業主の人でも安心して働ける形を設ける雇用を実施したところ、大きな収穫があったため、正解だったと思います。

ー応募者数はどのくらい増えたのでしょうか?

疋田:2年から3年の間でおよそ70人近くは在宅エンジニアの採用ができました。

当時でもエンジニアの経験者を採用するというのは難しく、人材紹介では1人採用するのに100~200万円かかったのですが、在宅エンジニアの雇用に力を入れたことで一気に人材確保ができたため、大きな成果はあったと思います。

今までは2年から3年だと10分の1にあたる6人から7人程度が精一杯だったので、この結果から見ても成果は感じられるのではないでしょうか。

リモートワークの導入方法や実施できている部署と実施が難しい部署

ーテレワークを2016年から始められたと思うのですが、具体的にどのような段階を踏んで実現させたのですか?

疋田:まず実施したのが「トライアルとしてプロジェクトチームの構築」「在宅勤務に関しての補助制度の構築」「オンラインコミュニケーションの推進」の3点です。

リモートワークに関する在宅勤務制度を作り、希望する社員が働きやすい環境を整備したのですが、在宅勤務制度を作っただけではなかなか利用してもらませんでした。

管理者側から「テレワークで管理ができるのか」従業員側から「仕事していると思われないのではないか」というような声が挙がっていたのが現実です。

このような課題を解決するために行ったのが「管理者の2割は在宅勤務をしなさい」というノルマです。

実際に管理者にリモートワークを試してもらって理解を得ました。

2つ目の在宅勤務に関しての補助制度は、自宅で仕事を行うときの「机」や「椅子」などの備品を購入するための費用補助や外部モニターの購入補助などを付けました。

3つ目のオンラインコミュニケーションの活性化に関しては、様々なイベントのオンライン化を行いました。

元々弊社はハロウィンや花見など様々なイベントを積極的に行っていたのですが、オンライン化をすることによって「オンラインの良さ」を知ってもらったという流れになります。

具体的にはオンラインでの「ハロウィン」「飲み会」「人狼大会」「すべらない話大会」などを行いました。

実際に参加してもらうことで楽しみながら「オンラインに対しての抵抗感やコミュニケーションが取れる」という点を理解してもらいました。

リモートワークを導入する際には「どのようにしてコミュニケーションを取るのか」というようなコミュニケーションに関する不安や悩みが多かったので、イベントを通してコミュニケーションが取れることを感じ取ってもらえた点はすごく良かったと思います。

ーなるほど。貴社でテレワークが進んでいる部署と進んでいない部署はどのような違いがありますか?

疋田:進んでいる部署はIT系事業の中でも「システム開発」などはテレワークがしやすい部署です。

一方、テレワークが進んでいないのが「インフラ系の開発や運用保守系」の部署になります。

インフラ系の開発や運用保守系の部署は、サーバーやデータ量のデータセンターの関係もあってそこでしか対応できないという点からも物理的に難しいです。

リモートワークでの課題や解決施策

ーリモートワークを通して困っていること・課題を感じているところはどこですか?

疋田:デメリット・課題に感じているのが「コミュニケーション問題」ですね。

弊社でもコロナの影響もあって7割から8割近くがリモートワークに切り替わったのですが、去年の2020年に「リモートワークに関して」のアンケートを取ってみたところ、デメリットに感じた点として一番多かったのがコミュニケーションでした。

コミュニケーションは「対面の方が取りやすい」という回答が多く、管理者側からすると「どのような状況なのか把握ができにくい」という声が多く挙がっていました。

ーコミュニケーションの課題解決にはどのような施策が行われているのですか?

疋田:コミュニケーションの課題解決はしないといけないという話になったので、弊社では実際にコミュニケーション問題の課題解決ができるようなツールを開発しました。

「ZaiTark」というツールになるのですが、現在弊社で使っており、2021年3月31日にリリース予定になります。

【ZaiTarkの主な機能】

・現場の状況が画面キャプチャを通して一目で把握できる
・Web会議をする場合でもURLの発行なく行える
・ワンクリックでビデオ通話などのコミュニケーションが可能
・出勤時間の表示・勤務時間の計測

弊社でのアンケートを通して作ったツールですが、利用している全員が現在どのような作業を他の人が行っているのか確認できるようなツールになります。

ログインした際に画面が表示されるようなシステムになっていますが、相手の名前のところにもビデオ通話機能が備わっており、ワンクリックで気軽にコミュニケーションが取れるように工夫しています。

さらに画面もはっきりとしているのではなく、ぼかした状態にしており、利用しているメンバーからも監視されているという気持ちを強く感じないように工夫しているツールです。

実際に画面キャプチャを通して全員の働いている様子がわかるため、仕事をサボるという状態の抑止力にもつながります。

ーZaiTarkはすごいですね。在宅勤務者や在宅エンジニアなどの研修はどのように行っているのでしょうか?

疋田:在宅エンジニアなどを研修する際に重要視しているのが「報連相が人並み以上にできるか」と「自己管理能力」です。

弊社では在宅勤務前研修を行っておりまして、「在宅勤務の仕事の流れ・環境構築の仕方」や「在宅勤務に特化した報連相の研修」を行っています。

【報連相の研修の内容】

・レスポンスの早さ
・報告の仕方
・なぜレスポンスが早くないといけないのか
・チャットでの報告の仕方

マニュアルの作成を行い、在宅勤務前に規律や働き方を覚えてもらうようにしています。

ーそうなんですね。最後にリモートワークを考えている人向けにメッセージをいただけたらと思います。

疋田:テレワークは従業員側や経営者側にとってもメリットがある働き方です。

もちろんリモートワークという働き方を上手に行う必要がありますが、社員にとってはワークライフバランスの実現や仕事に対する満足度を高めやすいです。

経営側からしても「コロナ関係なく在宅勤務可能」という掲載をするだけでも他企業との差別化が図れるため、人手不足を解消しやすい傾向にあります。

社内で具体的にリモートワークに関する働き方について話し合うことで、他の企業とは異なった良いアイデアが生まれる場合もあるのではないでしょうか。

ー本日はありがとうございました。

リモートワークは今では多くの人に知られている働き方ですが、やはり導入当時は様々な問題があり、四苦八苦しながら成果を出していることが伺えます。特にCLINKSが開発している「ZaiTark」はあらゆる面で活躍してくれる機能が備わっていますので、リリースされた際にはぜひ皆さんも利用してみてください。

「リモートワーク手帳(無料)」 では、リモートワーク環境で役立つツールや改善ノウハウ、使える制度などを解説しています。仕事のオンライン化に対応するために、ぜひご活用ください。

リモートワーク手帳

(取材協力:CLINKS(クリンクス)株式会社/疋田大輔

(編集:創業手帳編集部)